推進ってなんだろう

おそらく、馬術を始めたらずっと言われ続ける言葉の一つ『推進
じゃあ、推進ってどういうことですか?

おそらく、乗馬クラブ・馬術部などで一般的に使われている『推進』はとにかく前方に馬を動かすこと全般を指している。
もちろん、動かすこと全般と言っても焦ったり興奮したりして走りだすのは推進じゃないけれど・・・
そういうわけで、実際には人馬のレベルに寄って求められている内容もやり方も異なるし、及ばないレベルを一足飛びに求めても出来るようにはならないと思われる。
というわけで、馬を動かすのに必要な要素を段階的に見ていこう。

参考

やっぱり、こういう時に頼りになるのはトレーニングツリーなどの訓練段階の概念
他にもいろいろあるわけだけれどもとりあえずこれを中心に見とけばいいでしょう。

そして、推進に関係する用語たち
推進力Schwung透過性グラウンドカバーインパルジョンエラスティックボンド弾発カデンスカダンスケイデンス

段階を大きく二つに

前進気勢

まず、ほとんどの人が言われる「推進しろ」のレベル、ごくごく初期の段階は『前進気勢』だろう。
これもまた馬術用語として、とか人によっての意味の違いなどあるかもしれないが、ここでは文字通り馬自身が前方へ進もうとする意欲としたい。
馬が前へ出る気持ちをまず作らなければやら鞭やらでどうこうしてもなかなか上手くいかないのは当然である。
無理やりやって動かしたとしても長続きしないのでずっとやり続けなければいけないし、そうこうするうちに馬も慣れてしまってちょっとやそっとじゃ出なくなる。
これじゃ、術とは言えない。とすれば、ここが一番最初に乗り越えるべき壁。
これはトレーニングツリーの概念から行けば1〜3の部分。リラックスした歩調伸びやかな運歩を得られること。
これがすべての取っ掛かり。
となれば必要な要素は、騎手の姿勢・バランス。馬の動きに合わせられること=随伴扶助のタイミングが合うこと。そして、なによりも信頼関係。
姿勢・バランス騎座でこの深さは馬術の上で永遠の課題。
この質が騎乗の質を決めるようなものなので、この段階で完璧を求めるわけではなく、とにかくはね上げられないこと、基本的な動きについていけることが大切で、随伴と関連する。
扶助のタイミングは特に初心者におろそかにされがち(そもそも聞いたことなかったりする)だけど、実はこれをつかまないと扶助が効かない。
そのためには知識・イメージと体感で馬の動きを知ることが大切。
そして、信頼関係。これがないと、馬にリラックスを求めるのはまず無理。
必要なのは擬人化した馬でもなく、その他の動物でもなく、馬という動物の性質を知ること。そして、それに沿ったコミュニケーションを取ること。
乗ることだけに必死になっていると、この一番大事な部分を忘れてしまう。
ここでは、馬から引き出す段階なのでどちらかというと受動的な働きかけの部分が多い。


最初の段階で「推進しろ」というのは単に「馬が動いていないぞ」といわれてるにすぎない。
なぜ動いていないのか、どの点が欠けているのか、どうすれば動いてくるのかを考えて見つけ出さない限り蹴ってもムチで叩いても解決しないだろう。
そして、この段階が出来て初めて馬はに向かってこようとする。馬がを受けた状態であって、これができてから人がを受ける/コンタクトを取るのである。

推進力

こちらが馬術上での本来の推進力。もちろん、騎手と馬の調教レベルによって求められる程度は異なる。
ここで言われる推進ではグラウンドカバー弾発透過性インパルジョン/エラスティックボンド)が生まれていく。
前進気勢のある馬から、さらに調教扶助によって後躯の力強さ・踏み込みを増し、その力がを通って騎手のコントロール下に置かれ演技の動きにつながるレベル。
このため、単に後躯が動いているかどうかだけでなく、後躯による体重の負重(バランスバック)や銜受けコンタクト)・背の動きや調教段階に合わせた正しい馬の姿勢などが求められる。
(もちろん、前の前進気勢の段階できっちりできていれば背の動きなどは現れているはずの項目である)
ここでは、前進気勢の時に必要とされた要素(もちろんより質の高いもの)に加えて、銜受け扶助の連携(騎座)など比較的、能動的な操作が必要とされる。


ここで言われる『推進力』は、純粋に馬がそれ自身(+騎手)の身体を推進する力に加えて、それが効率よく『通り』、あらゆる運動へと『昇華』されること。
騎手の役目はこの馬が産み出した推進力をどう使うかのコントロールにあり、これが人馬一体としての推進力である。
だから、馬術は、『推進推進、また推進』といわれるのだ。