風邪薬・感染・似非科学

本物の風邪薬が発明される: ニュースの社会科学的な裏側
http://www.anlyznews.com/2011/08/blog-post_15.html
ついに!?これはノーベル賞モノの研究


というわけで、前に書こうと思って放置していたのを書く機会が来たようだ


風邪を治す薬というものは、現状ありません
風邪薬と言って出されるものは、解熱剤・抗炎症剤・咳止めなどの症状を抑える薬と抗生物質などになります
発熱を主とする症状は、風邪の原因となるウィルスに対する免疫作用なので、症状を抑えると【治りが遅くなります】
ただし、症状によって食欲不振や不眠などの症状が出る場合には、そのせいで体力が落ちて免疫が低下する可能性があるので、服用したほうがいいこともあります


抗生物質は、【ほとんど効果がありません】
抗生物質は、細菌を殺す効果がありますが、ウィルスに対しては全く効果がありません
普通の風邪は、ウィルスが原因になります
風邪をこじらせた場合に、細菌感染である肺炎などになる可能性があり、その場合には抗生物質を服用します
が、一方で予防的な効果としては、ほとんど期待できないとされていますので、細菌感染が疑わしい場合のみ服用するのが本来正しい用法です
無意味な抗生物質の使用が増えると、耐性菌が増殖する可能性があり、ホントに必要なときに抗生物質が効かなくなるおそれがあります
(↑なので、もし、服用を勧められて、服用を始めた場合には病気が治ったからと言って途中で止めないほうがいいとされています。指定分は飲み続ける。あるいは、まったく飲まない。)
さらに、菌であれば耐性のないものはすべて殺すので、大腸菌も壊滅的な被害を被り、腸内環境の悪化がおきます
そのリスクがあっても、効果を得るために抗生物質が必要な場合はあって、そのために使うのであって、病気の時に飲むから体にいいモノ、ちょっと調子悪いから早めに飲んでおこうなんてシロモノではないよ


感染とは、体内でウィルスや細菌が増殖することであり、ウィルスや細菌が【存在する】ことではありません
体表面や外部環境には無数に原因菌はいるので、0にすることは病院の無菌室など特殊な環境を除いて不可能です
非常に感染力が強い代わりに、常に存在しているようなタイプでない場合には体内に取り込まないようにしての予防が効果的になることもありますが、多くの場合には、取り込んでしまっても免疫が働いて感染しないようにするのが最大の予防法です
その条件で行くと、睡眠と食事が最重要
免疫の問題なので、基本的にはどの病気も治すときも睡眠を食事は最重要です
HIVウィルスなど、免疫系を破壊する系統の病気や遺伝子疾患などは睡眠や食事では予防・治療できませんが)


同じ理由で、怪我の治療も【殺菌消毒しないほうが早く治ります】
新しい創傷治療
http://www.wound-treatment.jp/
創傷治癒の基礎知識
http://www.wound-treatment.jp/wound006.htm


殺菌消毒が一般的になる以前は、傷を放置することが多く、生活環境も悪く、栄養状態も悪かったために感染症になるリスクが高かった
殺菌消毒するようになってから、感染症が急に減ったために、効果があるとされてきましたが、最近では実は傷口を綺麗に洗って清潔な状態を保つ=水洗いで十分だという話になっています
縫った傷なども、濡らさないようにしたり、消毒薬かけるより水洗いしたほうがいいみたい


殺菌消毒で、細菌は殺せますが、菌を殺す薬品を使うということは、当然表皮に保護されていない傷口の細胞も壊します
再生は正常な細胞から起きるので、そこを壊される=傷口が広がるということです
治りが遅くなれば、当然感染症リスクも上がります
(化膿のメカニズムは、殺菌とは無関係で、そもそも傷口を殺菌しても周囲からすぐに押し寄せてきて効果は長続きしません。殺菌消毒は手術などで使う道具、傷のない正常な表皮などでは効果があります。)
今では、キズパワーパッドのような創傷被覆材が開発されて売られているのでこれらがオススメ
新しい創傷治療<治療材料について>
http://www.wound-treatment.jp/title_hihukuzai.htm
通常の絆創膏と比べて、高価だけどはがれにくく(傷の状態にもよるけど、数日間位ならつけっぱでも可)、比較的早くに治るため、意外と経済的



一方で、まったくもってトンデモの似非科学による言説が結構おおっぴらに広まったりしてるけど、根拠の方をちゃんと調べればある程度は予測がつく
根拠を見ても、正しいとも間違っているとも言えないというタイプの言説はあるし、時に根拠となるデータがでっち上げだったり、根拠がめちゃくちゃでもたまたま合ってるなんて場合もあるけど
データで気をつけないといけないのは、一見正しいように見えて、実は別のもっとシンプルな説明がつけられていたり、すでに別の根拠で証明されているような場合、また統計・アンケートの場合にはそのデータの出し方をどうしてるか
統計って、(本人がそのつもりかどうかはともかく)一番嘘をつきやすい手段だからね
間違えでも、信じていて問題がない場合もあるし、間違っているために大きな害がある場合もある
危険性があるなら避けたいというのは当然だけど、ホントは危険じゃないけど危険な可能性があるかもしれないから避けようとして、そのために全く別のより大きな危険に身を晒すようなこともあるから気をつけないといけない

効果がある可能性があるなんて論文は上手くやれば捏造・・・といっちゃ聞こえが悪いけど、十分にありうるものでなくても構わないのであれば、統計のとりかた次第でどうとでもできる、と
だから、データがあるから本当だということにはならないというのは知っておくべきだよね


例えば、あるグループにはヨーグルトを毎朝食べさせて、それ以外にはあげなかったら、あげたグループの〜〜が良くなったなんてデータがあったりする
(実際この手の研究方法・データは多いと思うよ)
だから、ヨーグルトに含まれる〜〜という乳酸菌には〜〜の効果があるなんて言っちゃう
でも、食べなかったグループがその他の点で同じ栄養素を摂取しているか(朝飯抜きの集団で一報にだけヨーグルトを毎朝食べさせたら、そりゃ健康になるよね)とか、ヨーグルトの栄養素(乳製品の栄養価は高い)が効果があったのか、特定の乳酸菌が効果があったのかは、別の種類の乳酸菌が入ったものを与えたグループや、同じ栄養素を取らせたグループなどと対比しないとわからないよね
だから、薬の治験では、薬を与える集団と薬でない特にたいした効果のない栄養剤を与えたグループとで比較したりする
何も飲ませないわけでないのは、プラシーボ(偽薬)効果があるため
効果がないものでも、あると思い込むと何もしなかった時と比べて良い結果が得られる(悪いと思ってやると悪い効果が得られる)というもの
こういう、データに影響を与える要素をいろいろ排除して、それでもなお効果が期待できるだけの有意な差が認められて初めて【科学的に効果がある】と言える


もう一方はメカニズム的な研究をして効果があることを証明する方法もあるけど、これはどちらかと言えば、実際に効果があるものがどう効果を発揮しているかを調べることが多い
勿論、メカニズム的な方から開発されて、それを実証実験によって証明してというのも結構あるけれど、どちらにしてもそういうホントに効果があるかどうかの対照実験というのはほとんど、ちゃんと行われるので、これに不備がある研究を根拠にしたケースは懐疑的に見ていいと思う


マイナスイオンとか、プラズマクラスターとかああいうのも、なんかぁゃιぃけど、一般的に正しいと認知させてしまった似非科学だよね
まぁ、あの辺りはそんなに害もないと思うし、実際効果はあるのかもしれないしそのあたりはよく分からないけど、効果があると証明されたものでは実はなかった気がする


水の伝言みたいなヤツはもうほんとにどうしようもない
宗教みたいなものとして、信じるのは自由だけど、科学ではない


科学で証明できないもの、否定できないものがあるということを拡大解釈してなんでもありにしちゃうタイプは問題だよね
特に、原発事故で絶対安全だとまったくもって科学的でない思想を持ってたタイプが翻って、科学が正しいとは限らないからって、有り得ないことまで信じたり、有り得ないことを絶対安全がなかったんだから、絶対ありえないなんて可能性もないはずと言ってしまったり、反対方向に落っこちてしまっている人も多い
その両面はコインの裏表でおんなじ思想なんだよね
似非科学に騙されたり、絶対安全を信じていたりした人は、反省の仕方を間違えないでほしい


科学は、答えをくれるものではなくて、答えを出すための方法論だよ